ぼぎ子の恐怖図書館

好奇心には道徳がないのであります

漂流教室 ネタバレ レビュー②

前回は漂流教室全6巻(小学館文庫)のあらすじと感想でしたが

ひき続き作品に登場するユニークな人物の紹介結末への感想です。

 

前回の記事はこちら↓

bogibogiko.hatenablog.com

 

魅力的なキャラクター(登場人物)

漂流教室ではとにかく一生懸命なキャラクターが多い。だから、応援したくなる。

一見ギャグキャラかと思われるような子でも重要な役目を担っていたりするから気が抜けない。楳図氏は少女漫画「なかよし」で連載を持っていただけあって女の子がカワイイ

高松翔(たかまつ・しょう) 大和小学校6年3組 男子

この物語の主人公であり大和小学校の初代内閣総理大臣。困難に直面すると「お母さん!」と絶叫する。眼前で弱音を吐いた人間には女でも容赦なくビンタ。

川田咲子(かわだ・さきこ)

翔の隣の席の女の子。しっかり者で明るくて、いつでもみんなを元気づける優しいポニーテールの元気っ子。……に見えたのは、彼女が恋をしていたからであった。翔ちゃんだけが彼女を「咲っぺ」と呼ぶ。

小野田勇一(おのだ・ゆういち)

翔の近所に住んでいる3歳児。事件当日に翔について学校に行ってしまったため漂流に巻き込まれた。

作品中ではみんなに「ユウちゃん」としか呼ばれてなかったので、このような勇ましい名があることはこのブログを書く際に発覚した。

関谷久作(せきや・きゅうさく)

パン屋の人、既存の階級社会では比較的底辺として虐げられていた身のため、自分以外ガキしかいない異世界に転生してはっちゃけまくる。あまり強くないくせにラオウのように振る舞い、次々に問題を起こす。なんど投獄しても出てきて暴れるため、死刑制度があるなら執行してしまう方がいいのかもしれないとすら思った。最終回の「その後」が一番気になる人でもある。

高松恵美子(たかまつ・えみこ)

最後まで子供達の帰還を信じる翔ちゃんの母親。子供のためなら血を流すことも、カツラで変装して他人を騙すことも、ホテルの壁に穴をあけることも、死体にいたずらすることも厭わない。

大友くん(おおともくん)

髪型がスネ夫63組クラス委員長。頭がよくてしっかりしている。残念ながら翔ちゃんほどの人望がないのは、きっと体育が苦手なのだろう。

池垣くん(いけがきくん)

給食室攻防戦において戦果を上げ、大和小学校の防衛大臣となる。後の昆虫怪物の乱において身体の一部を失いながらも低学年生徒を避難させた場所へ通じる最後の門を守り続けた。(軍事費を増強させることしか脳のない某国の大臣よりよっぽど偉大な大臣)

柳瀬くん(やなせくん)

父親が医者だからという理由だけで翔の盲腸の手術をカッターナイフでやり遂げたスーパー小学生。

弱音を吐くと周りから「でも将来医者になりたいって言ってたよね?」と圧がかかるのが可哀想。未来のブラックジャック

西あゆみ(にしあゆみ)  大和小学校5年生

幼少期に転んで脊髄を痛め片足が不自由。みんなからのけ者にされているという理由で故郷の長野に戻りたいと砂漠を彷徨う孤高の美少女。翔ちゃんに「そっちは方向が逆だ」と保護される。翔の母親と交信できる唯一無二の不思議な力があり、北斗の拳でいうユリア的な存在。半開きの口が艶やか。

我猛(がもう)

IQ230という天才児。5年生なのに文部大臣になる。ただ一人、手塚漫画から出てきたようなフォルムのキャラだがあまり出番はない。説明役の頭いいキャラは大友で十分だったのかもしれない。

仲田(なかた)

西さんと同じ5年2組。普段はおとなしく、絵を描くのがうまい。普段はおとなしい(2度目)

実はヒール関谷と対をなすほどの邪悪。すぐに腹が減り他の生徒の分の給食を食べ尽くしてしまう。給食を食べたことを責められると思い、逃走途中で怪物用の罠を誤発動させ、本当に必要な時に使えなくしてしまう。惚れた女のために自ら石斧で頭をかち割り自決という壮絶な最期を遂げる。本当にどうしようもないが、お察しの通り一番好きなキャラ。

橋本くん(はしもとくん) 6年1組

3巻で初登場。14世紀のヨーロッパで猛威を振るったあの疫病に感染しているにも関わらず喉が渇いたと水を飲もうとして飲み水を貯めているプールに頭からダイブし溺れ、下痢糞を漏らすという大罪を犯す。もちろんプールの水は飲めなくなった。

 

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ここまで紹介してわかる通り、大人の登場人物はほとんど活躍しない。というか物語の最初の方で死んでしまう。

非常識な事態に常識を当てはめて行動しても生き残れないのだ!

他にも女番長やカマドウマのような未来人間、元プロ野球選手のミイラや、マリリン・モンロー(楳図氏はモンローが好き)など名物登場人物がたくさん出てくる。

 

現在にも通じる問題

物語が進んでいくと、砂漠に残る廃棄プラスチックや、光化学スモッグで目をやられる生徒など、令和の今頃になって世界的な環境問題に発展している事象が出てくる。

この漫画の連載開始は1972年。沖縄の返還やパンダの来日、札幌オリンピックなど日本にとってはイケイケな年であったと同時にあさま山荘事件や千日デパート火災などの悲惨な事件も起こった年。作者の楳図かずお氏は当時の日本の情勢を見て、このままでは未来に皺寄せが来るのではないか!?と警鐘を鳴らしたかったのではないだろうか。

特に印象的だったのは、砂漠の地下に埋もれた街の探索をしていると翔たちが生きていた時代には見たことのなかった「10万円札」なるものが登場する。

作者は1970年代ですでに円安とインフレが加速する今の日本や世界情勢を見通していたのではないだろうか……。

さらに、作品内では富士山の麓に「天国」と呼ばれるレジャー施設跡が見つかるが、そこでは人間を楽しませるために稼働していたはずのロボットたちが翔たちに襲いかかる。これも現代のAI、人工知能の暴走を予知しているようでゾッとした。

 ちなみにディストピア的な表現が好きなら、ロボットが活躍する長編SF「わたしは慎吾」も楳図作品の中では有名。映画エイリアンコヴェナントやプロメテウス、A.Iのテーマでもあるアンドロイドの悲壮を描いた作品。

 

結末がハッピーエンドでは……ない!がそこがいい

最終的に元の世界には帰れなかった翔ちゃん達ですが、地球が滅亡する運命なのだとしたら、その方が良かったのかもしれません。

滅亡する地球を回避することのできた最後の人間たちとして、翔ちゃんたちの繁栄を願いたい。

咲っぺの恋心は報われなかったけれど、きっと大友くんが幸せにしてくれるさ!

 

なお、漂流教室における世界が滅亡するまでを『14歳』というタイトルのSF漫画で描いているそうです。こちらも人気がある漫画なので漂流教室が面白かったと感じたならチェックしてみては。

 

今回このブログを書くために楳図かずお氏をリサーチしていたら、ミステリー作家の綾辻行人がファンだと知った。

なるほど綾辻氏はホラーやオカルト作品も多いので頷ける。どうやら綾辻氏が選ぶ楳図かずおアンソロジーもあるようだ。

 

さらに、郷ひろみなど有名歌手の楽曲の作詞や、歌唱、映画監督など、ホラー、SF、ギャグなどの漫画だけに限らず、オールマイティーな偉人なのだと知った。機会があれば他の楳図作品も観たい(読みたい)と思う。

 

 

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