ぼぎ子の恐怖図書館

好奇心には道徳がないのであります

仮面 ネタバレ レビュー

人は誰しも仮面を被っているというテーマ。

あれ?一人だけ上手く仮面被れてないんじゃない?

ショーンKの経歴詐欺とか、耳の聞こえない作曲家・佐村河内の詐病とか思い出す作品

オススメ:⭐️⭐️⭐️

     ※星の付け方については↓の記事をご参照ください

bogibogiko.hatenablog.com

 

作品概要

作者 伊岡 瞬

出版社 KADOKAWA

発表時期 2021年

ページ数 416ページ  

 ※少し長めだが、しっかり楽しめる。大丈夫。

 

 

あらすじ

読字障害ディスレクシア)というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、作家・評論家としてTVで活躍する三条公彦(サンジョウキミヒコ)。三条の秘書として雇われた菊井早紀(キクイサキ)はその謎多き私生活と過去が気になっていた。そんな折、パン店経営者の妻・宮崎璃名子(ミヤザキリナコ)の白骨遺体が発見される。また別件で行方不明となっていた新田文菜(ニッタアヤナ)の捜査にあたる刑事の宮下小野田は、文菜と璃名子の不審なつながりに気づく。人気評論家の三条は二つの事件に関わっているのか? 宮下たちは捜査を進めるが――。

 

感想

 

「代償」「本性」「悪寒」など、漢字二文字のサスペンス作品を多く出しているイメージの伊岡瞬氏、そもそもサスペンス作品は漢字2文字のタイトル多くて、タイトルだけで誰の本なのか、未読なのかちょっと分からなくなる。「理由」「少女」の湊かなえ氏とか……。

同作者のホラー・サスペンス「乙霧村の七人」に続いて2作目の読了(もしかしたら「代償」は読んだかも?)

「乙霧村の七人」については若干タイトル詐欺ぃ……という印象だったが、そこそこ面白かったので懲りずに他の本も読んだんだと思う。あまり記憶にない。

 

 

ドキドキハラハラの展開で目が離せない!というよりは淡々と読み進めるイメージ

『知的でハンサムな人気評論家・三条公彦。彼には誰にも覗かせない秘密の小部屋がある』

ラストまで目が離せない、瞠目のクライムサスペンス!

 

という帯の文句。

 

確かにラストまで目が離せなかったが、ドキドキハラハラの展開で目が離せない!というよりは、随所に見られる伏線や、全く関係のなさそうな失踪事件がどう関わってくるのだろうかと淡々と読み進めるイメージ

例えば、大人気評論家の三条公彦のアシスタントの募集要項は『未婚であること』だった。

これは後に明らかになる三条のクズな性癖である「他人の女が欲しくなる病」の対策だったが、序盤ではかなり怪しむ謎となる。じゃあ男を募集すればいいのにというのは禁句だ。(TV映り的な問題もあるのかもしれない)

他にも、刑事の小野田が考え事をするときに首の後ろを触る癖だったりとか、字の読めないハズの三条が宮下の落とした本の奥付まで確認したりだとか、ちょっと怪しいなと思う箇所がたくさんある。

 

監禁部屋にいた姿の見えない人物の唸り声

表紙にもなっている鉄扉とコンクリートの秘密の小部屋(監禁部屋)は三条公彦用というよりは嗜虐趣味のあるジャーマネの久保川用の小部屋だった。

真っ暗な部屋に閉じ込められた女性刑事の小野田が、姿の見えない先客の唸り声を聞く様子は、下手な状況描写よりよっぽど怖かった。

どんな暴力を受けたらこんな状態になるのかと背筋がゾクリとする。

さらに、小野田もその後に先の被害者と同じように凄惨な暴力に合うのだが、救援に来た刑事が小野田の顔を見たとき『野菜室の奥で見つかった腐ったトマトのような赤黒い顔』と表現していたのが恐てぃ。

 

テーマはペルソナとしての「仮面」それは外向きの表面的な人格。

人は誰しも複数の仮面を被っているというテーマのもと、

おしどり夫婦のパン屋の妻は不倫をしていただの、

人気コメンテーターは実は女遊びがすぎるクズだったりだとか

敏腕マネージャーは実は嗜虐趣味の猟奇殺人者だったり

物語が進むにつれてとにかく登場人物の裏の顔が明らかになり、一つの事件につながっていく。

この「仮面」については捜査側の刑事達にも当てはまり、敏腕女性刑事の小野田は実はディスレクシア(読字障害)であった事実や、警察内部で過去にあったとされる事件の内容が伝えられている事実と真逆だったりと、読み進むうちに物事の違う側面が見える瞬間が後半には特にたくさん用意されており、一気に読める。

 

しかしながら、唯一、ただ純粋に小野田のパートナーであろうとした同じ刑事の宮下だけは仮面がなかったのではないだろうか。

宮下は小野田の相棒であろうとする仮面を被ろうとしていたけれど、周囲にも本人にも心の中はバレバレだったし……。

結局は、うまく仮面を被れない人も存在するということ。これは私も嘘をつけないバカ正直なところがあるのでここは共感できた。

ちなみに宮下刑事は伊岡瞬氏の他の作品にも登場するらしい。

ファンには人気のあるキャラクターなのだろうか?今作ではあまりキャラが立っているような印象は受けなかった(逆に相棒の小野田の方が魅力的に思えた)率直な感想として、このようなサスペンスに刑事同士の恋愛模様のニーズはあったのだろうか?

映像化が決まっていて、クライアントから要望があったのだろうかと邪推してしまった。

7人の視点から語られる群像劇なのでドラマや映画向きだとは思うけど、小説だと少し中弛みした印象。最初の方が少しじれったかった。

 じれったい愛

ぜんぜんイヤミスじゃない

読後感が厭なイヤミスに分類されるらしいけど、犯人達の仮面が剥がれた姿が清々しいほど短慮でクズだったし、

その犯人に仮面上手く被れないマンの宮下が「どんなピカピカの仮面をつけようとクズはクズだ」と言い放つラストは、爽快な終わり方だと感じた。(私が天邪鬼なのか?)

 

ちょっと長いのでわざわざ他人にオススメはしないけど、楽しめた1冊。

 

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