鬼の跫音
写真と連動するミステリー(フォトミステリー)やJ-POPを題材にした物語(スケルトン・キー)や読む順番で何百通りものストーリーが繋がる話(N)など、面白い試みの作品が多い印象のミステリー作家 道尾秀介氏。
オススメ:⭐️⭐️⭐️
※星の付け方については↓の記事をご参照ください
作品概要
作者 道尾秀介
出版社 角川文庫
発表時期 2009年
ページ数 228ページ
備考 「跫」は一文字で(あしおと)と読むが敢えて「跫音」にしている。
写真と連動するミステリー(フォトミステリー)やJ-POPを題材にした物語(スケルトン・キー)、読む順番で何百通りものストーリーが繋がる話(N)など、色々と面白い試みをされている印象のミステリー作家、道尾秀介氏の作品は「向日葵の咲かない夏」から2作目。
今回は6話からなる短編集。
全てのお話にSという人物が登場するが、それぞれの話に繋がりは無い。
小説を書く側にとって、名前を考えるのって結構骨が折れる作業なので、こうやって統一しちゃうのもアリだなと思った。
全話に共通したモチーフがあると読んでる方でもなんか関連あるのかなって注目するし。
以下、各話と簡単なあらすじ。
各話と簡単なあらすじ
鈴虫 鈴虫が嫌いな主人公。恋敵を亡き者にした現場には鈴虫がいたから。しかし、息子が夏に鈴虫を拾ってきて飼い始める。
鈴虫のメスはオスを食べる。オスは食べられると知っていて近づく。そんな鈴虫の生態とリンクしているお話。
ケモノ ⭐️ 家族と馴染めない青年Sが、刑務所作業製品の木製の椅子に彫られた文字から猟奇事件があった村へ誘われる。椅子には「父は死体。母は犬、我が妹よ後悔はしていない」の文章。
結局、文章の意味には納得したけど少年の問題は何も解決していない。
よいぎつね 過去に神社で犯した罪、稲荷神社に埋めたのは何だったのか。
箱詰めの文字 デビュー作を盗作した作家の物語、いきなり家から盗み出した招き猫を返しにくる泥棒。その心中は……。
冬の鬼 ⭐️過去に火事にあった女性とその女を愛する男の物語。達磨に目を入れるという表現を拡大解釈するとこうなるのか。現代の春琴抄的、耽美なお話。
悪意の顔 ⭐️奇妙な物語調。キャンバスの中に人間や感情を閉じ込められる元画家女がいじめられっ子に声を掛ける。怖いいじめっ子なんて絵の中に閉じ込めてしまえばいいという。
ネタバレ 感想
6作中星がついている3作品はきっかけやアイディアは面白かったと思うけど、ちょっと短編では内容が煮詰まっていないかと思う節もあった。特に「悪意の顔」は最後の床下から多分殺された女性の遺体が見つかってるけど、その前にいじめっ子だったSが主人公と親友になるほどに穏やかな性格になった理由がわからないので、話の大筋は面白かっただけに、中途半端に終わってしまって少し勿体無いと感じた。
道尾秀介さんの得意とする「信用できない語り手」の物語はどんでん返しというより戦慄、その一文を読んだだけでいきなり作品の温度がー20度くらい下がる感じがいい。そういう表現が上手い作家さんだと思う。
今後も機会があれば読みたい。
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