怪異の総合デパートや!
これは本当の物語なのか、ワクワクしながら読み進む
小説投稿サイト「カクヨム」発のフェイクドキュメンタリー
オススメ:⭐️⭐️⭐️
※星の付け方については↓の記事をご参照ください
作品概要
作者 背筋
出版社 KADOKAWA
発表時期 2023年
ページ数 344ページ
備考 KADOKAWAにてコミカライズもされている(漫画)碓井ツカサ
あらすじ
オカルト界隈で記者をしている主人公が、記者仲間である小沢の行方不明事件について情報提供を求めているという程で話が進むフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)。
行方がわからなくなる前の小沢は「近畿地方のある場所」についての事件やネットの目撃情報について調べていた様子だった。
彼の勤務先の出版社から刊行された雑誌や様々な媒体・メディアから引用、抜粋したものを『近畿地方のある場所について』というタイトルの作品として主人公がまとめ、読者から情報を収集するという話。
話を読み進めて行くと、収集した情報や、小沢が書いていた下書きの原稿の内容などから「近畿地方のある場所」で全く別々の人間が遭遇した怪異や恐怖体験には実はいくつかの共通点があることが伺える。『山を囲むようにして発生する怪異』『女性がいなくなる』『石をあがめる人々』『柿』『女性と息子の親子の死』など、怪異を探索して行くうちに小沢がたどり着いた真実が見えてくる。
その先にある主人公の目的とは。
別々の怪異が一つの形になる
全く別の人物が体験した怪異が、実は同じ呪いの系譜だったというのは、小野不由美氏の『残穢』や三津田信三氏の『どこの家にも怖いものはいる』など、よく見るパターンではあるが、これが結構いいエンタメ。
話の一つ一つはオチのない怪談としては弱い話でも、並べると意味を成すというのは、読み手としても考察や妄想のしがいがある。
小沢が集めたという「近畿地方のある場所についての情報」というものは残念ながら、どの話もどこかで聞いたことのあるような話を引っ張ってきて「ある場所」に集約するように味付けしてあるが、その味付けとなる言葉選びが独特で私の好みだった。
例えば、
👻ネットのおかしな画像やコメント欄の書き込みについての話。アダルト動画の違法サイト、ある特定の女優の動画にだけおかしなコメントがついている『かわいい。うちへきませんか?』『お山にきませんか?かきもあります』『こしいれせよ』など、言葉のチョイスが絶妙に気味が悪い。柿もありますは不自然すぎて笑った。
👻林間学校集団ヒステリー事件では、関西の中学校が問題の地方へ林間学校と称して泊まりの野外活動を行った時の記録で、複数人の学生が暗闇の山から「おーい、おーい」呼ぶ声を聞いたという。その声が『心がこもってないっていうか、本当に棒読みをしているみたいな感じで。もっというと、日本語の意味をわかってないひとが話してるみたいな。ひとの真似をした動物が話してるみたいな感じでした。』と語る様子はなかなかゾクリとした。「おいでー こっちにおいでー かきがあるよー」という内容もグット。
ここら辺から柿って地味で怖いと思い始める。
👻ネットの掲示板で心霊スポット凸をしていた素人が近畿地方にある有名心霊スポット「お札の家」に行ったきり、釣り宣言もせずに消息不明になったとか(2ちゃんねるの蓋スレに近い)
👻読者からのおかしな手紙(俗に言う電波な内容)
👻神社や祠で神と崇められていたものが、実は地元では忌むべきモノだという老人の証言。
(加門七海氏の祝山:位牌山的な……)
などなど。今までにもどこかで聞いたことや読んだことのある話が多い。おそらく作者もホラーやオカルトが大好きで、今まで読んだり聞いたりした展開から自分が怖いなと思った顛末や一部始終を持ってきて物語を紡いでいるのだと思われる。
これはこれで怪異の総合デパートのようで見ていて面白かった。
「あ!これ知ってる!なつかしー」と言う感じで読み進めた。
若干、テープ起こしで発言するキャラクターのセリフ内容が説明くさくて、人物にリアリティないなと思った。やたらと自分のこと喋る人多い。
似ている作品
小説「どこの家にも怖いものはいる」 三津田信三
小説「怪談のテープ起こし」 三津田信三
小説「忌録: document X」 阿澄思惟
小説「ほねがらみ」 芦花公園
映画「ノロイ」
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