ぼぎ子の恐怖図書館

好奇心には道徳がないのであります

代償 ネタバレ レビュー

代償 伊岡瞬

悪の化身と呼ばれる人物は今までもいたけど、こんな凶悪見た事ない。

関わってはいけない人間。

他人に代わって損害の償いをすること。

 

オススメ:⭐️⭐️⭐️⭐️

     ※星の付け方については↓の記事をご参照ください

bogibogiko.hatenablog.com

作品概要

 

作者 伊岡瞬

出版社 KADOKAWA

発表時期 2016年

ページ数 421ページ

備考 2016年 啓文堂大賞 文庫大賞

 

 

 

 

関わってはいけない種類の人間。

 

そう言われて思いつくのはどんな人物だろうか?

「黒い家」菰田幸子「悪の経典」ハスミン、映画「凶悪」先生

映画「ルームメイト」ヘディ____。

私が想像したどのキャラクターよりも下衆で醜悪で悪意に満ちている人物が

この作品に登場する安藤達也だった。

「乙霧村の7人」「仮面」と続き、伊岡瞬氏の作品3冊目。安定の面白さ!

 

あらすじ

幼少期と青年期を描く二部構成

 

<第一部>

主人公の奥山圭輔(おくやまけいすけ)は世田谷の外れに住む一戸建てで

明るく人懐っこい父親と優しい母親に囲まれて、何不自由のない幸せな暮らしをしていた。

しかし、小学五年生の冬、遠い親戚の浅沼達也(あさぬまたつや)を預かっている最中に家が火事になり両親は死亡、家は消失してしまった。

 

火事を知らせてくれた達也に命を救われた圭輔は、そのまま浅沼家に引き取られることに。

 

<第二部>

暗い幼少期を超え、なんとか成長し、弁護士になった圭輔の元に、弁護を引き受けて欲しいという犯罪者からの手紙がくる。差出人の名前は安藤達也。幼少期に共に過ごした達也からの手紙だった。

手紙を読んだ圭輔は達也に会いにいくことを決めるが……。

 

 

とにかく登場人物への嫌悪感がすごい

 

正直、続きを読むことをこんなに厭悪するとは自分でも驚いた。

 

元々積極的な性格ではない主人公は小学生と言うこともあり、

第一部の幼少期では真性の悪人である達也にいいようにやられる。

それはもうドラクエ5の主人公の人生の方が全然マシに思われるほど。

(ヘンリー王子は青年期からいいヤツだったし……)

読むのが辛くなって、何度かリタイアしたくなった。

しかし、「代償」というタイトルから、きっと後編にはヤツに代償を払わせて

スカッとする終わりになるだろうと希望を抱いてなんとか読み進めた。

 

達也は、たまに圭輔の家に遊びに来ている同年代の親戚だが、

よくも悪くも普通の圭輔とは全く話が合わなかった。

 

低所得者が住む団地で育ち、暴力を振るう父と胸の大きいだけが取り柄の肥満気味の継母に育てられ、小学生なのに自慢話は母親と風呂に入ってラッキーだとか、団地の空き部屋でエッチな本を読んだだの酒、タバコをやっただの、とにかく下品で下劣な男の子だ。

おまけにマザー⭕️ァッカーで、熟女好きで、好きなものは焼肉で……。とにかく作者の術中に見事にハマり、第一部だけでもう達也の一家が嫌いになっていた。

 

内容的には私のベスト厭悪小説ジャックケッチャム著「隣の家の少女」に並ぶ厭さだった。

 

 

ページ数が多いのにも関わらず、一気に読んでしまう

 

これは、おそらく辛すぎる<第一部>を読んだ人のリバウンド現象だと思う。

 

陰惨な幼少期はわかった。達也という元凶もターゲットとした!さぁ。これから代償を払わせようじゃないか!HAHAHA!パーティはこれからだぜっ!

というハイな状態になって一気に読み進める。

 

しかし、第二部はなかなか思うように進まない。

何より、初めの段階で弁護士になった圭輔だが、相変わらず鈍臭い。まんまと達也の謀略にハマり、弁護士資格剥奪のピンチに陥る。

 

ここら辺で、アレ?と思う。

確かに主人公の圭輔は極悪達也と関わってしまったがために、幼少期にとんでもない境遇に落とされてしまって可哀想ではあるが、消極的な性格、すぐに諦めてしまう癖、喧嘩も弱い、頭も回る方ではなく、達也にしてやられてしまう。。。となると、

主人公に魅力がないのでは……と思い始める。

 

私が見たいのは第一部で不遇な目に遭った主人公が、第二部では勝ち組と言われる弁護士にまで成長し、方や犯罪者になった達也に華麗に復讐する姿なんだ‼️

 ……という期待が、もしかしたら裏切られるのでは…というドキドキで早く答え合わせがしたくてもう一気に読む読む。

 ここら辺の引き込み方はすごいと感じる。もうグイグイくる。第二部が面白いんじゃなくて、第一部の代償を払わせたくてしょうがない私が読み進めているに過ぎないが、

とにかく第一部あっての第二部なのだ。(当たり前だけども)

 

さらに「代償」の意味も気になってくる。

 

代償の意味

 1.他人に与えた損害のつぐないとして、それに相当する金品や労力を差し出すこと。

 2.他人に代わって損害のつぐないをすること。

 

 え……2だったらどうしよう。。。圭輔弱いから、もしかしたら大人になっても達也に嵌められるんじゃ。という懸念もでる。そのくらい、後半はテンポがイマイチ。

 

まとめ

辛い一部を読み終えて、成長して弁護士になった圭輔。方や容疑者として拘留中の達也、

どう料理してやろうかと読み進めるも……。

最終的な感想は、

 

足りん!

達也!お前には地獄すら生ぬるい。

 

でしたが、本当に気持ちが悪くなるくらいに嫌悪して読んだ第一部、

先が気になる第二部のスピード感は久々に読書に没入した感覚があって良かったです。

 

あまり他人にはおすすめしませんが、間違いなく秀作だと思います。

 

 

 

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