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ローズマリーの赤ちゃん ネタバレ レビュー

シンプル・イズ・ベストホラー!

同年代のエクソシストオーメンなどとともに1960年代のアメリカのオカルトブームの火付け役になった作品。

オススメ:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

     ※星の付け方については↓の記事をご参照ください

bogibogiko.hatenablog.com

 

作品概要

 

作者 アイラ・レヴィン

出版社 早川書房

発表時期 1967年 文庫化は1972年

ページ数 320ページ

 

備考 

映画化作品は呪われた映画として有名

1968年にロマン・ポランスキー監督で映画化。

映画で使用されたアパートの外観はジョン・レノンオノ・ヨーコが住んでいたダコタ・ハウス(ジョン・レノンが射殺された場所で幽霊が出ることで有名)

プロデューサーのウィリアム・キャッスルは映画公開後に悪魔崇拝者から「苦痛を伴う病気を発症する」という手紙を受け取った後に腎不全を起こし回復まで時間がかかった。

音楽担当のクシシュトフ・コメダは屋外パーティーの最中に脚本担当だったマレク・フラスコからふざけて突き飛ばされ崖から転落。脳血腫を起こして昏睡状態になり、キャッスルと同じ病院に担ぎ込まれた。コメダは翌年に亡くなり、フラスコも2ヶ月後に35歳で謎の死を遂げる。

映画公開から1年後の1969年にはポランスキー監督の自宅でチャールズ・マンソンカルト教団に襲われ、妻のシャロン・テート(女優)、ヘアメイクのジェイ・セブリング、監督の親友とその恋人が惨殺される。(テート・ラビアンカ殺人事件

ちなみに妻のシャロン・テートローズマリーと同様、当時は妊娠8ヶ月であった。

 

同年代の「エクソシスト」や「オーメン」などとともに1960年代のアメリカのオカルトブームの火付け役になった作品。

実はこの頃、サリドマイド事件という妊婦が服用すると奇形が生まれる薬品が市販されていて問題になっていた。

世の中の妊婦たちはお腹の中にいる赤ちゃんが大丈夫かどうか不安と恐れに包まれ、ノイローゼが増えたという恐怖を描いた作品。

尚、映画は小説の内容をほぼ踏襲している。

寡作だが多くが映画化されている稀有な作家

ポランスキーの映画「ローズマリーの赤ちゃん」は観ていたので大筋の内容は知っていたが原作は未読。

しかし、このたびディーン・R・クーンツの「ベストセラー小説の書き方」と言う本にプロットについて知りたければこの小説を読め!と紹介されていたので読んでみることに。

 

 

このアイラ・レヴィンという作家の作品は少ないながらも24歳の時の1953年に「死の接吻」で小説家デビューし(木曜深夜に民放で放送するようなサスペンススリラー)、1967年にローズマリーの赤ちゃん1972年ステップフォードの妻たち1976年にブラジルから来た少年と映画化が多い作家でもある。

これはレヴィンが大学卒業後に訓練用映画や番組の脚本を書いていたことも関連しているのだろうか、映像化しやすい物語を描く人なのかもしれない。確かにセリフで進んでいく脚本のような小説だった。

 

結果、ベットの中で読み始め、寝る間も惜しんで朝までに読み終わるという、文字通り「イッキ読み」の状態となる。

 

この小説の面白さについて、全てを伝えることは難しいとは思うが、自分なりにまとめてみた。

 

あらすじ

 

ローズマリーと夫のガイは兼ねてからの夢だった高級アパート「ブラムフォード」に引っ越してくる。

ブラムフォードは過去に自殺や殺人事件が多く発生した古い建物であったため、ローズマリーの友人であり作家のハッチは引っ越しについて反対していたが、当事者の2人はアパートの外装や設備が気に入り、過去の噂については気にしていなかったため敢行。

素敵な家に気に入った家具を集め、楽しい新生活を開始する。

 

ある日、ブラムフォードの住人でローズマリーの初めての友人テリーが自殺をしたことがきっかけで、テリーが居候をしていた同じ7階の住人であるキャスタベット夫妻ミニーローマンと親交を深める。

 

ローマンが過去に演出の仕事をしていたことや劇団や役者に詳しかったた俳優であるガイとは特に懇意になる。

キャスタベット夫妻と知り合ってから、ガイの仕事は上昇基調となり、同時に今まで避けていた子づくりについてガイは積極的になっていた。

 

排卵予定日、ローズマリーとガイは家でゆっくりと過ごす予定だったが、ミニーが差し入れてくれたチョコムースを食べるとローズマリーの意識が朦朧とし、そのまま昏睡状態で寝落ちしてしまう。

悪魔に犯される恐ろしい夢を見て目を覚ましたローズマリーは、自分が裸で寝ていること、身体中に爪で引っ掻いたような跡があることに気づく。ガイが自分が寝ている間に自分を抱いたことを知ったローズマリーは怒る。

 

喧嘩を機に二人はしばらく別居をするが、ローズマリーの妊娠が発覚し仲直りする。

出産まではキャスタベット夫妻から紹介された有名なドクター・サパースタインという医者の元に通うことにする。

 

妊娠初期の体調は最悪だったが、医者やキャスタベット夫妻の言う通りに薬草を煎じたドリンクを飲み、処方された薬でなんとか乗り切り、後期には痛みもなくなり出産を迎えることとなる。

 

出産を控えたある日、少し前から原因不明の昏睡状態だったハッチが亡くなり、葬式に出席したローズマリーにハッチからの遺言と1冊の本が手渡される。

本には悪魔崇拝者の儀式の内容や、使用する薬草の特徴、ブラムフォードに過去に住んでいた魔法使いの名前や経歴が記載されており、ローズマリーは自分が悪魔崇拝者の儀式によって受胎させられたこと、夫が悪魔崇拝者どもに自分と子供を売ったことを知る。

 

ローズマリーは現状からの脱出を試みるも、出産が始まってしまい疑念の晴れないままドクター・サパースタインの元で出産するが途中で気を失ってしまう。

目が覚めると、ドクター・サパースタインから子供は流産したと説明があり、また薬を処方され寝かされる。

 

しばらくは流産のショックと処方される謎の薬により放心状態だったローズマリーだったが、ある日、自分が寝ている部屋と同じ階からかすかに赤ん坊の鳴き声がすることに気づく。

 

鳴き声のする方に向かっていくと、フラムフォードの住人たちがキャスタベット夫妻の部屋に一同に会し、悪魔崇拝者のようなローブを着て謎の赤い飲み物を飲んでいるところに出くわす。部屋には黒いゆりかごが置いてあり、黒い手袋をした赤ん坊が寝かせられていた。

 

赤ん坊を見たローズマリー人間とは異なるその見た目に驚愕するが、ローマンに「この子の母親になって欲しい」と言われ、赤ん坊を抱きしめて母親になることを決意する。

その場でみんなでローズマリー万歳!ローズマリー万歳!

 

 

おしまい

 

 

 

シンプルな恐怖

今回、あらすじをまとめていてその少なさに驚いた。

この有名な物語が結末に至るまでのあらましがわずかしかなかった。

最初にまとめた内容はこうだった。

 

ローズマリーが曰くつき物件で妊娠して悪魔の子を出産するお話。

 

……まさにタイトル通りの内容。しかし、これがどうして本当に気持ちの悪い、恐ろしい話に仕上がっているのだから不思議だ。

物語の始まりから後半まで、あれー?ちょっと様子がおかしいなー。考えすぎかな?と思うような小さな出来事が継続的に発生している。それが曰くつきの物件への引越しでセンシティブになっているのか、妊娠のせいなのか、それとも……という不穏な気配が終始漂っている。

 

ローズマリーが引っ越したフラムフォードは過去に人を殺して食べた姉妹や、魔法使いと言われた呪術師のような男や自殺など、暗い事件がたくさんある建物だった。引っ越してきた部屋にもなぜか塞いである通路や壁。住人の言動もやたらと詮索的だ。

 

夫のガイは、ローズマリーとの子供を作ろうとしなかったが、ある時から急に子作りに熱心になる。

そしてガイの生業である役者はライバルが突然の失明にあい、とんとん拍子でいい役が舞い込んでくる。

 

一方、ローズマリーは妊娠初期にもかかわらず体調がすぐれず腹部の痛みにずっと悩まされていた。

ミニーが持ってくる謎の薬草が入っている飲み物や、お守りと称して渡されたハーブの臭いも鼻につく。

体重は減り、傍目からも激しくやつれている状態が明らかなのに、一番身近にいる夫や近隣の住人、住人から紹介された医者は

「初めての妊娠なんてそんなものだ」と相手にしてくれない。それどころか、ブラムフォード以外の知り合いに会うことを咎めたり、雑誌や電話で他の妊婦の情報を集めたりすることを禁じたりする。

 

サタニズムなのかノイローゼなのか苦悩するこの辺のローズマリーの孤独は哀れで読んでいても辛い。

 

さらに、「ブラムフォード」の住人の正体に気づいたローズマリーの古い友人ハッチはローズマリーを呼び出して家以外で真相を話す約束をした当日、意識不明の状態に陥る。(この時、ガイが急に家に帰ってきたり、ハッチの手袋が無くなったりと怪しい描写がある)

ハッチは亡くなるが、最後にローズマリーに魔法使いについて書かれた書籍を残す。その本を元に、飲まされていた薬草や変な匂いのするハーブの正体、「ブラムフォード」で過去に魔法使いとして殺された男の名前がアナグラムでローマンであることを知る。

 

このように丁寧に張られた細かい伏線が最終章で一気に回収される際には、「あーーやっぱりな!」「うん、そうだろうな」というようなことの連続で爽快感を伴った読後感がある。

 

登場人物の変貌が不気味

ローズマリーと俳優で夫のガイは物語の最初は本当に仲良しで素敵な夫婦だったが、物語が進むにつれて

ガイが妻よりもキャスタベット夫妻の方を優先するようになるのが、小さいことなのだけれど不愉快だ。

ミニーの作ったチョコムース「味がおかしいから残したいという」ローズマリーに「君は冷たい人間だな」というようなことを言ったり

久しぶりにアパート以外の友人たちと会ったローズマリーに対して「あの雌犬どもに何を吹き込まれた!?」と責める。

 

近隣住人もやたらと手作りの料理を持ってきたり、ローズマリーが小包を持っていると、郵便?持ってあげるわ。誰から?これ何?とお節介だったりするのも気持ち悪い。

 

こんな細かい違和感の積み重ねが不気味さ、最終的には恐怖につながっているのが見事。

 

 

読み始めから終わりまでずっと面白い!

シンプルな構造なのに丁寧に装飾された極上のホラー小説。

著名な作家がよくおすすめ作品として「ローズマリーの赤ちゃん」納得の作品だ。

 

登場人物、展開、結末に全く無駄がないと感じた。読み始めから終わりまでずっと面白い!そんな稀有な作品だった。

ページ数も320ページと少ないながら、読み応えがあり、十分に興奮し、感動できる。

これはおすすめの作品だ。

 

 

ローズマリーの息子

大ヒットを飛ばしたこの作品には実は続編がある……。約30年後の2000年にアイラ・レヴィンが突然に発表した作品が「ローズマリーの息子」である。(そのまんま!)

30歳になったローズマリーの息子がサタンになるのを阻止するために悪魔崇拝の団体から逃げ出すという内容らしいのだが、あいにくネットの評価は低い。

興味はあるけど、すぐには読まないかな。

 

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