ぼぎ子の恐怖図書館

好奇心には道徳がないのであります

でえれぇ、やっちもねぇ ネタバレ レビュー

あいかわらず岡山弁は怪談話によく馴染む 

妾の女が霊媒師家業、ハレー彗星接近。。あれ???これって「岡山女」でやりましたよね

江戸、明治、大正、昭和。岡山縛りの4つの怪異譚

 

オススメ:⭐️⭐️⭐️

今回は星3つなのでレビュー短いです

     ※星の付け方については↓の記事をご参照ください

bogibogiko.hatenablog.com

作品概要

 

作者 岩井志麻子

出版社 KADOKAWA

発表時期 2021年 

ページ数 194ページ

備考 99年に日本ホラー大賞を受賞した『ぼっけえ、きょうてえ』の後継作

 

大正、昭和。異なる時代の岡山を舞台に繰り広げられる妖しく陰惨な4つの怪異譚。

日本ホラー小説大賞ぼっけえ、きょうてえの後継作と言われていますが、うーん。

話自体はつながってないし、ただの岡山縛りの怪談という感じ。

 

短編のあらすじと感想

 

穴掘酒(大正時代)のあらすじ

刑期を終えた女が、愛しい男宛に書いた手紙の形式

獄中からも何度も手紙を書いていたが、男からの返事は一切ない。

実家に届く手紙を家族が隠しているのか?結婚した妻が隠しているのか?

手紙を読んでいれば返事を書かないわけがない。

出所したら結婚すると約束したのに、あなたと私は同じ罪を背負ってるのに……

女の手紙の文面は動揺から、どんどん粗暴になり、もう方言で何を言っているのかわからない状態に(怒ってるのはわかる)

やっと男から返信がくる。墓場で穴掘酒でもしましょう、と。きっと独りで来てくださいと。

 

感想

ホラー作家の描く「時候の挨拶」」というのもまた味があっていい。淑女を装っていた女がどんどん荒ぶってくる文面。 

「暦の上では春でも、肌に感じる風も私の心に吹く風も、真冬にあるようです」から最終的に「暑い!ハラワタが煮えくりかえるほど、暑い」になる。怖い。

 

手紙形式のやりとりで面白かった作品といえば湊かなえの「往復書簡」が思い出された。

 

 

本書で一番印象に残ったのはこの話だったかな。

ところで、大正時代というのは1912〜1926年の14年間の短い時代なんですね。一番短い年号。

 

でぇれえ、やっちもねえ(明治)のあらすじ

表題作。コレラが大流行する明治の岡山で、家族を喪った少女・ノリ。

ある日、日清戦争に出征しているはずの恋人と再会し、契りを交わすが、それは恋人の姿をした別の何かだった。

ノリが産んだのは毛むくじゃらの異形の怪物。異形の生き物が予言を残すと言い伝えられていた岡山で予言屋を始める。

 

感想

霊感なのか、シャルル・ボネ症候群なのか。不思議な力を持つ女性が愛人稼業と占い師をやっているというお話とハレー彗星が日本に近づくという話は以前も岩井志麻子氏の小説で読んだことがある。「岡山女」だ。

 

こちらも岡山を舞台にした話だったので、これが『ぼっけえ、きょうてえ』の続編とされてもおかしくなかったと思う。(それほど、前作と関わりのない話が続く)

個人的には「岡山女」の方がより陰惨で面白かった。

 

大彗星愈々接近(昭和)のあらすじ

子供の頃に神隠しでいなくなった筈の竹内ヨシが、老人の姿でひょっこり戻ってきた話。

心は子供のまま、見た目は80歳を過ぎた叔母を孫の幸吉が面倒を見る。

 

感想

地球にハレー彗星が接近したのは1986年(昭和61年)。神隠しを浦島太郎の女性版とした話の発想は面白かったけど、特にオチもない話。

 

カユ・アピアピ(大正)のあらすじ

マレーシアの言葉で炎の木という意味。

ホンソウ子の道世と茂世。両親からホンソホンソと可愛がられて育った姉妹のお話。

賢い道世はお父さん子、美しい茂世はお母さん子。成長した道世は東京の学校へ。

有名な小説家の先生と結婚し、そして殺人を犯す。

 

感想

作中に何度も出てくる『ホンソ』の意味がわからなかったので調べる。

ネットでもあまりヒットしなかったが柳田國男の本に少しだけ記載があり。(さすが!)

 

ホンソとは中部日本ではこれをホンソの子といふ。ホンソは多分奔走の漢字音であつて、粗末の正反對を意味して居た。

定本柳田國男集より

ホンソとはつまり立派な、偉いという意味でいいかな。可愛がられて育てられた姉妹ということか。それがわかったところでこの作品の「ふーん」という感想は変わらず。

 

まとめ

やっぱりホラー大賞受賞した「ぼっけぇ、きょうてぇ」のインパクトには及ばないながら、岡山弁の効いた安定品質の陰惨ホラー。

 

岩井志麻子氏と言えばちょこちょこ映画出演されていて、キングみたいに恐怖映画の鑑賞時に見つけると少し嬉しくなるレアキャラ。こないだ観た『死刑に至る病』にも出ててほっこりした。()

やっぱりハマり役は自身の「ぼっけぇ、きょうてぇ」の海外での実写化、三池監督作品『インプリント』に女郎を痛めつける役で出てたのが至上だったなといつも思い出す。

岩井志麻子の怖い躾。表情が最高!

 

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