熱烈なファンの多い飴村行氏の「粘膜シリーズ」の第一弾。読む「ブレインデット」
小学生 vs 河童 拷問、惨殺、とにかく下品でグロい奴らが紡ぐファンタジーワールド
ホラー大賞選考会史上、もっとも物議を醸したという問題作。(結局受賞した)
オススメ:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 最高得点 ※注意:この作品は人を選びます
※星の付け方については↓の記事をご参照ください
作者の飴村氏が「日本ホラー大賞に3回応募したけどダメだったから、自分の読みたい作品を書いた」と何かのインタビューで言っていた。
なるほど、なにがあってもくじけず、決して屈することなく突き進むと云う不退転の覚悟(ヤケクソ)で臨んだ結果ということですね。
ホラー大賞の審査員の先生方も、この作品に受賞させるのにはかなり勇気が必要だったことでしょう。
下品ではしたない物語なので他人におすすめはできませんが、読み終わった後にハイテンションで誰かと内容を語らいたくなるような小説。(名作です)
『粘膜人間』 作品概要
『粘膜人間』(ねんまくにんげん)は、飴村行(あめむらこう)によるホラー小説。2008年『粘膜人間の見る夢』というタイトルで応募した作品が、第15回日本のラー小説大賞長編賞を受賞し、本作品が作者のデビュー作となる。
2008年10月に角川ホラー文庫にて文庫化。
A6版の文庫本サイズで208ページ。
週末に3-4時間もあれば、読後によだれが止まらない狂犬(クージョ)のような状態になります。
風味が似ている作品
「姉飼」(遠藤徹)
「牛家」(岩城裕明)
「少女庭国」(矢部嵩)
どれも好きな作品🖤
『粘膜人間』のあらすじ(ネタバレ)
中学生の溝口利一(みぞぐちりいち)と弟の祐二(ゆうじ)は、溝口家の後妻の連れ子である末の義弟、
小学生の雷太(らいた)の暴力に恐れを抱いていた。
小学生のくせに身長195㎝、105kgの巨漢で凶暴な雷太には父親も逆らえず、業を煮やした2人は雷太の殺害を企てる。
蛇腹沼に住む怪物「河童」に雷太殺害を依頼をすべく、人間では唯一河童と交友関係のあるベカやんという中年男性に会いに行く。
ベカやんから「河童は純粋でマヌケな生き物だが、自尊心が高いから頼み事をする時には絶対に長男のモモ太に話を通すように。さらに、願い事には必ず見返りを求めてくるぞ」と河童への対応の注意事項と、河童兄弟それぞれの特徴を聞き出す。
兄弟が蛇腹沼へ行くと3人の河童がいた。ベカやんの言いつけ通り一番背の高い河童、長男のモモ太に雷太殺害を依頼するが、
モモ太はその条件として、中学生の女と性交(グッチャネ)させろという。
その条件を呑んだ兄弟は、村で唯一の非国民である成瀬清美(きよせなるみ)という女の子を河童に差し出すことにする。
モモ太が先に女の容姿を確認したいというので、殺害日前日にモモ太と祐二は清美の家へ行く。
祐二が外に呼び出した清美をモモ太は気に入り、早速雷太を明日殺すと祐二に約束する。
雷太の殺害計画当日、予定地である村外れの狩猟小屋に祐二が行くと、待ち合わせたはずのモモ太は来ず、
モモ太の弟のジッ太とズッ太という2匹の河童が来た。モモ太は殺害後の報酬である「清美とのグッチャネ」が我慢できず、清美の家に向かったため、代わりに自分たち2匹が代わりに雷太を殺すという。
「自分たちにも女を用意しろ」という無茶な要求をする河童たちに、祐二は呆れつつも今更計画は変更できないため、ジッ太とズッ太にもグッチャネする女を紹介することを約束する。
利一が雷太を連れて狩猟小屋に現れると、ジッ太とズッ太が雷太を枯れ井戸へ突き落とそうと体当たりをするが雷太の身体は予想以上に重く、頑丈でびくともしない。
自分が殺されそうになったことで憤慨した雷太はジッ太とズッ太を八つ裂きにする。
河童どもがやられている間に祐二が後ろから斧を持って雷太に近づき、後ろから雷太の頭頂部をかち割る。
雷太は脳みそを飛び出させて動かなくなった。
利一と祐二は雷太と河童たちの死体を井戸に隠した。
一方、グッチャネをするために一人清美の元に向かったモモ太は、清美の家を憲兵が見張っていたため、
グッチャネを断念し狩猟小屋へ。小屋には雷太を殺害したはずのジッ太とズッ太も、依頼者の利一と祐二の姿も無かった。
ジッ太とズッ太を探して井戸を覗き込むと、そこにはひどい傷を負った大きな男が挟まっていた。
小屋にあったロープを下ろして男を助けたモモ太は、傷だらけの男からジッ太とズッ太の血の匂いがプンプンするため男にこの場所で何があって、どうしてジッ太とズッ太の姿が見えないのか聞く。
男は頭に酷い傷を負い、記憶喪失になっていたため、どうしてここにいるのか?なぜ怪我をしているのか?ジッ太とズッ太?自分は誰なのかもわからないようだった。
記憶喪失だという男が嘘を言っているのか、本当に知らないのか判断ができないモモ太は、男に「ゴンベエ」と名付け、なんでも知っている山神キチタロウの所に連れて行くことにした。
キチタロウのところに着いたモモ太はゴンベエの記憶喪失は嘘ではないことを知る。ゴンベエの記憶を取り戻すには子供の脳みそを補充する必要があるという。
モモ太はゴンベエと共に、ゴンベエに脳みそを補充するため、子供がいる村へ向かう。
村に向かうと「溝口家」と書かれた提灯が灯っている家があった。ゴンベエが「この家を知っているような気がする」というので中に入ってみると、そこでは亡くなった祐二の通夜をしている父親と利一の姿があった。
実は祐二は井戸で雷太を殺した後、清美を犯しに行き、清美の逆襲にあって命を落としていた。
急に家に戻ってきた雷太を見て、家人の父親と利一は驚くが、ゴンベエは自分が雷太であった記憶を喪失しているため分からない。
とりあえず、補充用の脳みそとして利一を攫っていく際に、2人の抵抗にあい、モモ太は銃で2人を殺す。
再びキチタロウのところに戻ったモモ太とゴンベエは、利一の死体から脳みそを取り出し、ゴンベエの脳に補充した。
これで暫くするとゴンベエの記憶も戻るだろうと告げてキチタロウは消える。
脳を補充したゴンベエは自分が雷太であることを思い出すが、まだ完全に脳が固まっていないため、それ以上は思い出せなかった。しかし、自分がモモ太に助けられた古井戸で確かに何かがあった気がするため、その場所に戻ることに。
再び訪れた古井戸の奥でモモ太はずたぼろぐっちょんになって死んでいるジッ太とズッ太の死体を見つける。
ジッ太とズッ太の死体から発せられる強烈な死臭の衝撃により、雷太も数日前に兄の利一に騙されて連れてこられたこの場所で河童たちを惨殺したことを思い出す。
全てを悟ったモモ太とゴンベエ(雷太)の戦いの火蓋が切って落とされる!
おしまい
(*˙ᵕ˙*)え?おしまい? ここで?
クライマックスで終わる最悪(褒め言葉)の作品
おそらく、作品の下品さもさることながら、ホラー大賞を受賞させるかどうかの最大の焦点になったのではないかと思われるこの問題。
そうなんです。完結していないんです!
クライマックスと結末は別物ですが、この小説はストーリーの最高潮で突然に終わりを迎えます。本来であれば大幅減点・クレームもののはずですが、今回はそうではありません。
だって、クライマックス以前が楽しすぎるから!!!
だから、結末なしの未完成の物語でも十分にお腹いっぱいになるんです。
むしろ胸やけしている状態です。
物語が佳境に入る時にはすでにあなたはこのエログロお下劣ファンタジーな世界の虜になっているはずなので、もう勝敗なんてどうでもいいんです。きっとどっちが勝っても血だらけ、肉片飛び散り、脱⚫️の状況は変わらないハズ。
奇妙で笑える世界観
この本を分類するならば「ホラーファンタジー」というカテゴリーになるでしょう。
皆様は「ファンタジー」と聞いてどんなものを想像されるでしょうか。
「fantasy」(ファンタジー)の意味
「fantasy」は、空想や想像力によって生み出された物語や世界観を指す言葉である。 また、現実とは異なる非現実的な要素が含まれたフィクション作品やジャンルを指すこともある。 例えば、魔法や神話の生き物が登場する物語は、ファンタジーと呼ばれることが一般的である。 ーWeblio辞書より
ツノが生えたユニコーンのような美しい獣、剣と魔法の世界、
精霊たちの歌声……そう、それがファンタジー!
河童の小便の匂いがたまらなく好きな生態をもつ緑に光る「毒猫」、小学生なのに190㎝、体重100キロを超える巨漢の雷太という少年、女の股ぐら泉に男のマラボウを入れてソクソクすることを「グッチャネ」といい、若い男と逃げた妻を捕まえて鼻を削ぎ落とした血だらけの状態でぎゅろびん!ぎゅろびん!と犯すことを「豚嫁折檻」という。
それもファンタジィィィ!!!
下劣な私が好きなホラー映画で「ブレインデット」というゾンビスプラッタコメディ映画があるんですが、この「粘膜人間」は「読むブレインデット」という表現でよろしいかと思います。
スプラッター映画は恐怖を煽りますが、恐怖を感じるということは、まだ私たちが理性を失っていない証拠です。
しかし、過度な過度なスプラッターは理性を失わせ、その惨状は幻想的にさえ見えてくるということなのでしょう。
そうです。エログロスプラッターはファンタジーなのです。(ちがう!)
ここに、「ブレインデット」の監督であるピーター・ジャクソンがのちにファンタジー映画の王道である「ロード・オブ・リング」を撮った監督であることを記しておきます。
↓廃盤の超貴重ビデオ📹メルカリにありました↓
河童と巨漢の小学生のバトルという所からして、すでに予想の斜め上なのですから、
そこからはもう幻想的な風景が広がります。
ヒロインの清美が軍の強力な拷問薬物「髑髏(どくろ)」を使われて白昼夢を見るシーンは、
ゴア表現に定評のある友成純一氏に劣らず酷いものですし、鼻を削がれた母親が子供たちの前で犯されるときの「ぎゅろびん!ぶべふしゅる!」と絶叫している状態も、こんなもん、よく思いつくなと感心さえします。脳が痺れてるのかもしれません。
朗報!動画まだYoutubeに残ってました!超貴重なので見たことないホラーファンはぜひ↓
※食事中は絶対ダメ
ファンタジー世界を彩る変態ども
この小説には酷い世界で懸命に生きる濃い登場人物が出てきます。
あまりに酷い描写も、まぁ、河童(ファンタジー)だからしょうがないか。となります。
溝口3兄弟……長男で中学生の利一と次男の祐二、怪物雷太は後妻の和子の連れ子で末っ子。国民服を着ている。
河童3兄弟……山の神キチタロウの云うことはなんでもYes。自尊心が強く年功序列にこだわる種族のため話しかける時には必ず年長のモモ太から話しかけるべし。願い事には必ず見返りを求める。
成瀬清美……兄が婚約者と逃亡したため非国民になる。メインストーリーにあまり絡まないのに第二章を丸々使って拷問される女子中学生。本作品のゴア担当でヒロイン。
松本少佐&清水少尉……拷問用麻薬「髑髏」の使い手。清美の兄の行方を探っている。
ベカやん……村のハズレに住む逃走兵。ランニングシャツ一枚で小太り。ニコニコしている。兵隊時代に使っていた八二式自動小銃を所持し、村で唯一河童と物々交換による交流をしている。祐二に射精をせまる変態。
キチタロウ……河童たちが山の神と崇める存在。玉袋のような奇妙な瘤に覆われた気持ちの悪い見た目。人間には見えない。けっこう鬼畜。
どの人も結構サイコなところがあって魅力的です。
まとめ
突き抜けた残虐描写とファンタジーな世界観。奇妙で下品な登場人物たちと魅力あふれる本作ですが、リア友にはおすすめしてはいけません。
このような卑猥で下劣で残酷な物語を嬉々として読み進めているとしたら、それは気狂いと思われてもしょうがないでしょう。
この本は、読む人もそれをおすすめする人も選びます。
そのため、逆に踏み絵としての利用をお勧めいたします。
この本についてどう思うか聞いて、あなたと同じ感想を持つなら……そいつは我らと同族です。
この本を読んで「何これ?気持ち悪いだけなんだけど」という感想を持った貴方。
残念ですが貴方とは袂を分つ運命にあるようです。
住む世界が違いすぎるのです。(こちらが地獄)
今、結婚を考えている恋人がいるのなら、ぜひ、この小説を読ませてみましょう。
価値観の違いは後々になって大きな亀裂を生みます。
ちなみに、この「粘膜シリーズ」は他にもたくさん出ています。
2巻にあたる「粘膜蜥蜴」は1巻とは違う主人公の物語ですが、軍が跋扈する世の中や戦時中という世界観は同じです。
「粘膜蜥蜴」は第63回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)を受賞した本格推理小説となっておりますので、実はこちらも面白いです。「粘膜人間」でもうこりごり!と思わなかったアナタ!ぜひ続編も読んでみてください。
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