ぼぎ子の恐怖図書館

好奇心には道徳がないのであります

海と毒薬 ネタバレ レビュー

海と毒薬


生きた人間を生きたまま殺す。

第二次世界大戦中の1945年に実際に起こった、アメリカ軍捕虜8名に被験者が生存状態で施された実験

九州大学生体解剖事件』をベースに、参加した2人の研修医(勝呂と戸田)、看護婦(大場)を中心に、彼らがなぜこのような恐ろしい生体実験に参加るすことになったのかを描いた作品。

  ※今回は3なのでレビュー短いです。

オススメ:⭐️⭐️⭐️

     ※星の付け方については↓の記事をご参照ください

bogibogiko.hatenablog.com

作品概要

作者 遠藤周作

発表時期 1957年(昭和32年

ページ数 208 

受賞 新潮文学賞

   毎日出版文化賞

備考 1986年に映画化

 

あらすじ(ネタバレ)

とある町の小さな医院に、無口で不気味だが腕のいい医者がいる。ひょんなことから彼が過去に事件になった生体解剖実験に参加していたという暗い過去があることを知る。

 

九州のF市で大学病院にいた勝呂(すぐろ)と戸田(とだ)は同僚で共に第一外科所属の研修医だった。

時は第二次世界大戦中、病気でなくても人がたくさん死んでいく中、病院では新しい治療法を発見するため、もう先の長くない患者に対し、生存確率の著しく低いが新しい技術の術式を試す方針を示していた。

 

同僚の戸田はそのことに対し、医学の進歩のためなら多少の犠牲もしょうがないことだと割り切っていたが、勝呂にはそうは思えなかった。病院では第一外科の橋本教授と第二外科の権藤教授が次期医学部長の座を争い、各々が新しい発見や治療の成果をあげようと躍起になっていた。

 悶々とした日々が続いていたある日、第一外科の教授が医学部長の姪を手術ミスで死なせてしまう。

外科では、名誉挽回を図るための米国捕虜を使った人体実験を行うことが決定され、勝呂や戸田にも参加要請がくる。

 

勝呂は後になっても何故参加したのか、断らなかったのか分からなかった。その場にいた戸田が参加を決めたから自分も参加したのではないかと振り返る。

戸田は幼少の頃から、良心の呵責という気持ちが欠如していた。今回の人体実験についても放っておいてもどうせ処刑される人間だからと、特に反対する理由もなかった。

看護婦の大場が参加を決めたのは、橋本教授の妻への当てつけや、橋本教授に惚れている看護婦長への競争心からであり、医学の進歩などについては一切考えていなかった。

 

実験当日、鳶色の瞳の米国捕虜に「君の病気を治すための手術だ」と説明して手術台へ寝るように指示すると、にっこりと笑って素直に服を脱いで寝そべった。

手術の後、軍部から見学に来ていた幹部たちは実験成功を見届けると何事もなかったかのように軍部の送別会へ移っていった。そこへ戸田は捕虜の肝臓を所望されて運んでいく。

 

手術室で静かに目を閉じていた勝呂は戸田に「お前は強いな」と言う。 

戸田は「殺したんじゃない。活かしたんだ」と言った。勝呂は「いつか俺たちは罰を受けるのではないか」と呟き、

一人屋上から海を見つめ、詩を呟こうとしたが口の中が乾いてできなかった。

 

おしまい。

 

 

感想 

想像よりも控えめな内容で淡々と進む物語

遠藤周作の代表作で本作と並んで評される「沈黙」が面白かったのと、アマゾンのレビューが良かったので手に取った。

不謹慎ながら、もっと残酷な内容を期待していたため、肩すかしを食らった気分。

評価は星3つなので感想は短めにさらっといきます。

 

 ※評価の結果は、ぼぎ子の読み手としての未熟さが起因している可能性があります!再読した場合に変更する場合もありますし、個人的な感想でありますので悪しからず。

何が彼らをこのような残虐行為に駆りたてたのか? 終戦時の大学病院の生体解剖事件を小説化し、日本人の罪悪感を追求した問題作。

戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? どんな倫理的真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識"の不在の無気味さを描き、今なお背筋を凍らせる問題作。

事前の情報でこの小説のベースとなった九州大学生体解剖事件』では『眼球を取り出すために頭を押さえつけた』などと証言していた医師が居たことに加え、アマゾンレビューでは上記のような概要だったのでどんな恐ろしいことが……と身構えて読み始めたが、捕虜には事前に手術の内容を説明し(嘘だが)きちんと麻酔が施され、苦痛や痛み、悔恨の念などはないのではないかと思われるような内容であった。(読者に配慮してあえて残酷描写は抑えたのだろうか?)

本書はあくまで「小説」なので全てが事実ではないにしろ、731部隊ナチスの人体実験、陸軍の「虹波」など、他にももっと被験者が悲惨な目に遭うような人体実験はあったのではないか、また、現在も人間ではないにしろ、恒常的に行われている化粧品の動物実験やオートメーション化された畜産業の実態などの方がよほど残酷なのではないかと言うのが素直な感想。

日本人の中に神がいるか居ないかは別として、国や他の人間のせいで理不尽な死に方をした人間は世の中にごまんといる。

 

「神なき日本人の罪の意識の不在さの不気味さ」を描いた作品ということだが、昨今のコロナ禍における日本の異常なアルコール消毒やマスク強要の圧力などからも、日本人がどれだけ空気を読んで周りに忖度して生活しているか、もしくは自分で考えないで行動しているかは明白であり、今更この小説を読まなくても不気味な国民性は十分に理解していると感じた。寧ろこの小説ではあまりにも薄味すぎる。

 

このような感想を持つ私の存在も含めて、この小説は警鐘を鳴らしているのかもしれない。

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